12色とりどり
ウィルとドリーを誘うジョニーとダレック。
ジョニー「ウィルの言ってたみたいに、もう少し良い船の方がいいかもしれないけど」
ダレック「まあ一回試してみないか」
四人は、その夜も部屋を抜け出した。ベッドを膨らませるのも慣れた手つきだ。
ジョニー「ウィルの言ってたみたいに、もう少し良い船の方がいいかもしれないけど」
ダレック「まあ一回試してみないか」
四人は、その夜も部屋を抜け出した。ベッドを膨らませるのも慣れた手つきだ。
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洞窟の真ん中で、四人掛かりでボートの舳先を水に沈ませる。すると底から伸びてきた海藻が、舳先を掴んでボートをまるまる水中に引きずり込んだ。
海藻に引きずられるままに、海底を目指す四人。
底にたどり着く前に、飽きたように海藻がボートから離れていったから、途中からは四人自身でオールを漕いで進んだ。
着いてみれば、ウィルの言った通り、海底のカラフルな粒の正体は、石や岩や珊瑚や魚じゃなくて、ビルやお店や家々の屋根、宣伝用の電光掲示板、並ぶ街灯、ライトアップされたオブジェなどだった。
虹色のペンキのバケツをひっくり返したような街。
四人は港の端にボートを括り付けると、街に入った。ジョニーは5、6才の頃に戻ってた。ドリーは、頭が犬に、手足も毛むくじゃらになってたけど、洋服は着たままだし、二足歩行のままだし、言葉もほぼ問題なく喋れるまま。ダレックはやはりあまり変化が無い。
ウィルは、街に着いた途端、着飾った若い女性に肩を抱かれ、路地に消えてった。
「あいつ、信じらんない」ダレックはぽかんとウィルを見送った。
でもウィルが行ってしまって経たないうちに、三人もそれぞれ別れて、思い思いの場所で過ごした。
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水底の街は、ピュネウマと言う。
よく遊びに行くようになった四人。
よく遊びに行くようになった四人。
あるときピュネウマの楽器屋で、一人物色してる幼いジョニー。
そこに妹のメアリがやってくる。
「メアリ」
ジョニーは、メアリを見つけて嬉しそうに駆け寄った。「君も楽器欲しいの」
メアリは、海の外にいるときより年上に見えた。身につけてる物がそう見せるのかもしれなかった。
メアリは、海の外にいるときより年上に見えた。身につけてる物がそう見せるのかもしれなかった。
彼女は、胸元に金糸の刺繍がある白いドレスに、赤いマントを羽織って、頭に月桂樹の冠を乗せてた。更に右手に王笏、左手に盾を持っている。
メアリは、王笏と盾を持ち上げてみせて、肩を竦めた。「欲しいけど、買っても持てない」
「買ったの、それ」ジョニーが王笏と盾を物珍し気にじろじろ見た。
メアリ「買った覚えないの。使い道もないし、どうしよう」
ジョニー「似合ってる」
メアリ「そうかしら。ところでウィルは一緒じゃないのね」
ジョニー「あいつ、街に着いてすぐに友達とどっか行っちゃった。いつもそうなんだ、ここにくると」
メアリ「友達って?」
ジョニー「今日は男の人だった。鎧を着た人」
メアリ「王軍兵かしら。まさか誘拐じゃないわね」
ジョニー「友達だったよ。ウィルが、知ってる人だからって言ってた」
ジョニーは小さなギターを、メアリはフィドルを買った。ジョニーがギターもフィドルも持った。二人は、歩いててたまたま見つけたレストランに入った。中ではバンドがライブしてて、二人も買った楽器を持って加わった。メアリは、王笏と盾を床に放り出してフィドルを持つ。楽しいセッションはずっと続いた。
メアリは、王笏と盾を持ち上げてみせて、肩を竦めた。「欲しいけど、買っても持てない」
「買ったの、それ」ジョニーが王笏と盾を物珍し気にじろじろ見た。
メアリ「買った覚えないの。使い道もないし、どうしよう」
ジョニー「似合ってる」
メアリ「そうかしら。ところでウィルは一緒じゃないのね」
ジョニー「あいつ、街に着いてすぐに友達とどっか行っちゃった。いつもそうなんだ、ここにくると」
メアリ「友達って?」
ジョニー「今日は男の人だった。鎧を着た人」
メアリ「王軍兵かしら。まさか誘拐じゃないわね」
ジョニー「友達だったよ。ウィルが、知ってる人だからって言ってた」
ジョニーは小さなギターを、メアリはフィドルを買った。ジョニーがギターもフィドルも持った。二人は、歩いててたまたま見つけたレストランに入った。中ではバンドがライブしてて、二人も買った楽器を持って加わった。メアリは、王笏と盾を床に放り出してフィドルを持つ。楽しいセッションはずっと続いた。
長く弾いてて腕が痛くなったメアリは、バンドメンバーにフィドルを預けると、まだまだ楽しんでるジョニーを置いて店を出ようとした。でもマントが後ろから引っ張られて動けない。メアリが振り向くと、王笏と盾がマントの裾に引っかかってる。ため息をついて、メアリがそれらを両手に抱えると、ジョニーが彼女に声をかけた。
「重いの?でも、もうそれは君の一部のはずだよ」
言われてみれば、盾は左手の、王笏は右手の一部のように感じられて、もうメアリはそれらを重荷に思わなくなった。彼女はジョニーに微笑みかけると、店を出ていった。