20憶測と実験
ホプキンスの部屋で過ごした翌日、ダレックとドリーは、朝から意気込んで校舎内の学生課を訪ねにいった。帰省の船便変更願いを届け出るため。
ホプキンスが言うのに、やはりここはパラレルワールドに行くには好都合らしいし、それに決行日までには、4人で十分計画を練らなきゃならない。帰省はライブ後だ。
ぎりぎりの帰省便変更願いを、学校側が簡単に受け入れるとは思えなかったけど、もし聞き入れてもらえなければ、帰省しないだけだった。
2人はなかなか寮に帰ってこなかった。学生課の教師と揉めてるんだろう。
ジョニーとウィルは、寝間着のまま、上半身をベッドボードにもたれさせ毛布を纏って、紅茶を飲みつつだらだらと2人を待つ。同じベッドの中。ストーブは焚いてたけど、身体をくっつけ合ってれば、更にぬくぬくと心地よかった。
ジョニー「君は、おかしいって思う?こんなトントン拍子に進むの。まあ結局、ホプキンスはパラレルワールドへの水先案内人にまではなってくれなかったけど」
「そこまでお人好しじゃなかったみたいだね」
「うーん。やっぱり罠かな?ホプキンスも奴らとグル?」
「…そう思うよ」
「でも素直に、ホプキンスはグルでもなんでもなくて、このライブチケットは、彼の単なる好意って考え方もできる」
ウィルが不安そうに目を瞬かせる。「ジョニー、君、本当にそう思うの」
「僕が純粋に新任教師を信用したらおかしい?失敬だな」
「…事実、信用してないじゃない」
ウィルの目を見て首を傾げてみせるジョニー。
「全く、君って…」ウィルは目を閉じて首を振る。「昨日の術。先生を試したでしょ、」
「ああ、ホプキンスが僕らの術を解けるかどうか?」
「!だから僕相手にまではぐらかさないでよ。君、自分で使うだけじゃなく、僕らにまであんな出来の悪い透身術使わせて、校舎内歩き回らせて、先生達に捕まるかどうか試したでしょ」
ジョニーは口笛を吹く。「さすが。ご名答」
「…とにかく君の読みは正しかった。ホプキンスは運が良かったって言ってたけど、あれがバレないのはおかしすぎる。先生達は、わざと僕らを見逃してる。奴らは、僕らとホプキンスが親密になるのを望んでるんだ。そう読んで証明までした君が、チケットのことはただのホプキンス自身の好意だって信じるの?」
「だって彼、本当に焦って僕らの術を解いたし、バレなかったこと、心底ホッとしてみえたし」
「あんなの演技だよ、」
「なんでもかんでも疑うのは良くないな」
「なんでもかんでも疑ってない、僕はホプキンスを疑ってるんだ!」
「でもじゃあ、具体的に、僕たちがパラレルワールドに行ったとして、奴らがなんか得することある?」
「いくらでも考えられるよ。パラレルワールドに閉じ込めるつもりかもしれないし、向かう途中で波に飲み込ませるつもりかも、」
「パラレルワールドに閉じ込められるんだったら、そんなの願ったりだし、波に飲み込ませるって、そんなの僕らがここに入学した時から、幾らでもチャンスはあったはずだ」
「…じゃあ、なんだっていうの」
「ホプキンスは奴らの一味じゃあない。チケットは、ただのホプキンスの好意。でも奴らは、僕らと彼をくっつけようとしてる。パラレルワールド関係なしにも、ホプキンスはまだ他に面白い情報を持ってるんじゃないかな。僕はそう見てる」
「…」
「それからね、僕らと彼をくっつけようとしてる、んじゃないってこともある。僕と先生なのかもしれないし。もちろん、君と先生、かもしれないし、さ」