6入り江
消灯後。
ジョニーとドリーが先に部屋を抜け出した。
ウィルはダレックとしばらく部屋で待機してる。
ジョニーとドリーが先に部屋を抜け出した。
ウィルはダレックとしばらく部屋で待機してる。
「君も飲むの」とウィル。
「いいや」
「ドリーは君にも飲んでほしいんじゃない?」
「ジョニーが飲めばそれでいいだろ。それに、二人も飲んじゃったら帰り道が不安だ。まともじゃない人間二人も連れて、暗い中ここまで戻ってくるのは気味悪い、そうだろ」
「まともじゃないって?」
「別に、飲んだら発狂したり、酔ったり、そういうんじゃない。嘘をつけなくなる以外、何もないさ。だから帰り道ジョニーを背負わなくちゃいけないとか、そんな心配はないんだけど。でも気分悪くないか、これっぽっちも嘘がつけないヤツ連れてコソコソ校則違反するんだぜ。一人ならまだ我慢できるけど、そんなヤツ二人も連れてたら、ドリーだって君だって部屋にたどり着くまで生きた心地しない、違うか」
「その通りだね。言い逃れにも聞こえるけど」
お互い自分のベッドに腰掛けてたが、ダレックがウィルのベッドにきて、彼の隣に座って聞く。
「なあ、俺のこと嫌いか」
ウィルは聞かれてすぐに頭を横に振った。「ううん、嫌いじゃない」本心だ。
「なあ、俺のこと嫌いか」
ウィルは聞かれてすぐに頭を横に振った。「ううん、嫌いじゃない」本心だ。
ダレックは安心して言った。
「そりゃあ良かった」
ウィル「ただ不謹慎なやつとは思ってたけど」
顔をしかめるダレックに、ウィルは笑って続けた。
「昨日まではね。今は、」
「今はそうは思ってない?」
「今は保留中」
「なんだそれ」
ダレックは頭を掻いた。
***************************************
しばらくして、ウィルとダレックは部屋を出た。寝着にコートを羽織り、素足に靴をはいて。
二人は、寮の門をよじ登って越えると、回廊を渡った。寒いけど天気は良く、風もない。回廊から見る海は、真っ黒で穏やかだった。
回廊を抜けて学校へ着くと、校門は越えずに、学校を迂回して裏へ向かった。雑木林を通ることになるんだけど、夜中に通ると、雑木林も鬱蒼とした森みたい。ダレックは足場の悪くない道をマスターしてて、真っ暗な中、足取り確かに進んだ。ダレックのスマートな道案内のおかげで、ウィルも躓くことなくついていく。
雑木林は学校裏までくると途切れた。二人はむき出しの岩場を降りていった。急斜面じゃないけど、さすがにここはどこも足場は悪い。
「ここは慣れだな」
ウィルに手を貸しながら、先輩面で言うダレック。ウィルは呆れて眉をあげる。
入り江に降りるまでは、結構かかった。これほど下るなら、回廊まで水位が上がる嵐の日なんかは、入り江はまるきり海の中なんだろう。
入り江でジョニーとドリーとボートが待っていた。
「そりゃあ良かった」
ウィル「ただ不謹慎なやつとは思ってたけど」
顔をしかめるダレックに、ウィルは笑って続けた。
「昨日まではね。今は、」
「今はそうは思ってない?」
「今は保留中」
「なんだそれ」
ダレックは頭を掻いた。
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しばらくして、ウィルとダレックは部屋を出た。寝着にコートを羽織り、素足に靴をはいて。
二人は、寮の門をよじ登って越えると、回廊を渡った。寒いけど天気は良く、風もない。回廊から見る海は、真っ黒で穏やかだった。
回廊を抜けて学校へ着くと、校門は越えずに、学校を迂回して裏へ向かった。雑木林を通ることになるんだけど、夜中に通ると、雑木林も鬱蒼とした森みたい。ダレックは足場の悪くない道をマスターしてて、真っ暗な中、足取り確かに進んだ。ダレックのスマートな道案内のおかげで、ウィルも躓くことなくついていく。
雑木林は学校裏までくると途切れた。二人はむき出しの岩場を降りていった。急斜面じゃないけど、さすがにここはどこも足場は悪い。
「ここは慣れだな」
ウィルに手を貸しながら、先輩面で言うダレック。ウィルは呆れて眉をあげる。
入り江に降りるまでは、結構かかった。これほど下るなら、回廊まで水位が上がる嵐の日なんかは、入り江はまるきり海の中なんだろう。
入り江でジョニーとドリーとボートが待っていた。
ジョニーとダレックがボートを押して波に浮かべた。四人で乗って出発する。オールが二つあって、漕ぐのも年長組だ。
ボートに積んであるランプにジョニーが火をともした。見回してウィルがボートをほめると、ジョニーとダレックは顔を見合わせてあまりいい表情をしない。ダレックがウィルに言った。
「もう少しまともなのがほしい」
ジョニーも言う。
「こんなのほめないでくれ。言ったろ、君の設計には期待してるんだから」
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左手に切り立った岩壁。近づくと小さな隙間がある。そこをボートで通り抜ける。
三人から頭を下げろと言われるウィル。天井が低い。
三人から頭を下げろと言われるウィル。天井が低い。
狭い通路が終わるといきなり視界が開けた。大きなドーム型の洞窟。
洞窟の中央までボートを進ませて止まった。
ダレックがランプを取って、水面に掲げた。
ウィルは息を飲んだ。ダレックが照らした、そこに見える海底から目を離せなかった。
ウィルは言った。「街だ。街がある」
三人も驚いてウィルを見た。ドリーは、ウィルと並んでボートから身を乗り出し、底を覗いて言った。「街に見えるか?」
洞窟の中に溜まる海水は、ことさら透き通ってた。
ダレックがランプを取って、水面に掲げた。
ウィルは息を飲んだ。ダレックが照らした、そこに見える海底から目を離せなかった。
ウィルは言った。「街だ。街がある」
三人も驚いてウィルを見た。ドリーは、ウィルと並んでボートから身を乗り出し、底を覗いて言った。「街に見えるか?」
洞窟の中に溜まる海水は、ことさら透き通ってた。
深い底に、一面広がるカラフルな色の粒。キラキラしてる。
確かに、果てしない上空から地上を眺めてこの光景を見たら、誰もが美しい街だと思うだろうけど。
ウィルは顔を輝かせて三人に言った。「君ら、船を作って、この街に行くつもりだったんだね」
「…いや、参ったな」ジョニーは頭を掻いた。「でも君がそういうんだから、そうなんだろう」
「これ、ほんとに街だったのか。驚いたな」とダレック。
街であるにしろないにしろ絶景には違いない。四人は揃って底を眺めた。
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その後起こったことは、あっさりウィルの予想を裏切った。
ジョニーは海水を飲んだ。ドリーは真相を問いただし、ジョニーは正直に答えた。
「これ、ほんとに街だったのか。驚いたな」とダレック。
街であるにしろないにしろ絶景には違いない。四人は揃って底を眺めた。
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その後起こったことは、あっさりウィルの予想を裏切った。
ジョニーは海水を飲んだ。ドリーは真相を問いただし、ジョニーは正直に答えた。
答えを聞いて、ドリーはジョニーに拳を振り上げ、ダレックにその腕を掴まれた。ドリーは、勢いそのままダレックにも掴みかかり、ウィルは慌ててドリーを押さえつけた。「ドリー、ドリー落ち着いて、ボートがひっくりかえっちゃう、」
その後宿舎へ帰る道も、帰ってからもずっと、何日だって、ドリーは押し黙ったままだった。
水を飲んだジョニーは、自分とダレックの犯行を随分簡単に認めてしまったのだ。
トリックなどなかった。
その後宿舎へ帰る道も、帰ってからもずっと、何日だって、ドリーは押し黙ったままだった。
水を飲んだジョニーは、自分とダレックの犯行を随分簡単に認めてしまったのだ。
トリックなどなかった。