間章
作者「何故逃げない。これじゃあしり切れとんぼだ」
苛々と頭を掻きながら、作者はうずくまる少女に迫る。少女は、その声に、ぼんやりと頭をあげた。
少女は辺りを見回す。カラクリ道具の裏側みたいに、薄暗い中に大小の歯車だらけ。縦に横に組み合わさって、しかしシンと止まっている。作者と少女が居るのは、一つの大きな、横になった歯車の上だ。
少女は自らの腕を摩る。何ともない。ついさっき噛み砕かれたはずだった。
作者「メグが必要かい?」憔悴した少女の様子に、先までと打って変わってゆったりと微笑を浮かべる。「そんなに求められちゃ、尚更おいそれと登場させられないなぁ…」
歯車の重なる向こう、遠く暗がりの一部がかすかにうごめいて、小さな影になる。カタ、カタ、と音を立てながら影は近づいてきた。ホーウ、ホーウ、となにか息漏れのような音も、一緒に近づいて来る。少女は怖くなり再び顔を膝に埋めた。