色とさんすう

 
家族でまちを歩いてる。隣にはお姉ちゃん。目の前にお父さんとお母さん。
突然お姉ちゃんが僕に言った。
「向こうから歩いてくる人の色当てゲームしよう」
僕は頷いた。意味はわからなくてもいいんだ。答えは全部、お姉ちゃんが知ってるから。
「ほら、あの女の人は何色?」
向こうから、おしゃれをした若い女の人が早足で歩いてくる。僕は考える。大きな赤いバッグを持ってるなあ。
「赤」
僕がお姉ちゃんを見上げながら答えると、お姉ちゃんはすごく面白そうに笑った。
「それは、あの女の人が持ってるバッグの色でしょ!そうじゃなくて、聞いてるのは、あの人自身の色。あの人は、オレンジでしょ」
女の人がすれ違っていく。僕は振り向いてその女の人のテキパキと歩く後ろ姿を観察した。洋服は、灰色っぽいし。どこにもオレンジ色なんてない。
僕は一生懸命考えたけど、やっぱりわからなかった。でもわからなくても、悩んだりしない。お姉ちゃんが答えを知ってるんだから。大丈夫。
 
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私は小学校に入った。さんすうの授業は、別に好きでも嫌いでもないけど、飽きることはない。先生の話に飽きることはあるけど、そういうときは、自分のノートとか、教科書に並ぶ数字をこっそりみつめる。そうすると面白い。数字たちが、数字同士で、話したり、遊んだり、けんかをしたりしてる。
 
“1”はしっかり者だし、さばさばしてて、あんまり文句は言わない。“2”もしっかり者だけど、ちょっとお高くとまってるところがある。“3”はおっとりしてて鈍臭いから、たまにみんなにうっとうしがられてる。でも私は3が好き。私とちょっと似てるもん。“4”は、少しお母さんに似てる・・・色が白くて、おしゃれさん。
 
“4”は、私がノートに書くとき、美人に書いてあげないと、悲しそうにする。でも私、なかなか美人に書いてあげられないんだよね。
 
“3”は、ちょっと変に書かれるくらい、なんにも気にしないみたいで、だから、彼女を書くとき、わざと変な風に書いてからかうこともある。そういうときは、“3”もにやにやして、こっちを見てるんだ。